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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)44号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。

1 取消事由(一)について

成立に争いのない乙第一号証によれば、株式会社浅野商店より大成木材への昭和四八年七月二〇日付売上送り状控には、引用意匠があらわれる物品につき、「材種ラワン、長さ三〇〇〇」と記載され、断面の形状として、「台形状本体の上面中央に同じく台形状の小突起を設けたもの」が図示され、右の、台形状の本体の下辺が二五、上辺が二〇、高さが一五、台形状の小突起の下辺が一〇、上辺が八、高さが五なる旨それぞれ記載されていることが認められるところ、証人久保一美・同小倉芳太郎の各証言によれば、右数字の単位はいずれもミリメートルであつて、右物品は、目地棒、即ち目地形成用目地部材であることが認められ、他に右認定を左右すべき証拠はない。

してみれば、引用意匠に係る物品は目地棒であると認定した審決に誤りはなく、原告の取消事由(一)の主張は理由がない。

2 取消事由(二)について

前掲乙第一号証、成立に争いのない甲第九号証ならびに前記認定事実を総合すれば、本件登録意匠及び引用意匠はともに、目地形成用目地部材に関するものであること、本件登録意匠は、断面形状が一定の長尺状のもので、右側面図を右に九〇度回軸した状態における断面形状は、台形状本体(以下、単に「本体」という。)の上面中央に同じく台形状の小突起(以下、単に「小突起」という。)を設けた態様のものであり、本体及び小突起の構成比率(下辺対上辺対高さ)はそれぞれほぼ1対0.7対0.6、0.3対0.2対0.4であること、引用意匠は、断面形状が一定の長尺状(三〇〇〇ミリメートル)のもので、その断面形状は、台形状本体(以下、単に「本体」という。)の上面中央に同じく台形状の小突起(以下、単に「小突起」という。)を設けたものであり、本体及び小突起の構成比率(下辺対上辺対高さ)はそれぞれ、ほぼ1対0.8対0.6、0.4対0.3対0.2であることが認められる。

そして、本件登録意匠と引用意匠における、本体の下辺の長さ(w1)、上辺の長さ(u1)と高さ(h1)との各比率、斜辺の下辺に対する角度(α)、小突起の下辺の長を(w2)、上辺の長さ(u2)と高さ(h2)との各比率、斜辺の下辺に対する角度(β)ならびに両意匠の全体の高さ(h)等を対比すると、別表(一)及び(二)記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

そこで、両意匠を対比するに、両意匠は、ともに、基本的態様が断面一定の長尺状のものであり、また、右側面図を右に九〇度回軸した状態における断面形状は本体の上面中央に小突起を設けた構成のものであつて、両意匠は、この点において共通しているということができる。

そして、右共通点は、目地形成用目地部材の意匠として全体的なまとまりを形成すべきものであることは明らかであり、さらに、本件登録意匠の登録出願当時、目地形成用の目地棒には、右のような形態のもののほか、一辺のみが斜辺となつていて、他の一辺は下辺に対し垂直な台形状本体の上面に、右と同様の形状の小突起を、下辺に垂直な辺を揃えて設けた態様のもの、一段の台形状のもの、ほぼL字形状のものが存したこと(この事実は、前掲乙第一号証成立に争いのない乙第二ないし第四号証、第六号証の一ないし一二、証人久保一美・同小倉芳太郎の各証言により認める。)を併せ考えると、右基本的構成態様は、看者の注意を惹くものであつて、両意匠の要部をなすものと認めるのが相当である。

ところで、本件登録意匠と引用意匠における本体及び小突起の構成比率には前記認定のとおりの差異があり、また本体の下辺の長さ(w1)、上辺の長さ(u1)と高さ(h1)との各比率、斜辺の下辺に対する角度(α)、小突起の下辺の長さ(w2)、上辺の長さ(u2)と高さ(h2)との各比率、斜辺の下辺に対する角度(β)ならびに両意匠の全体の高さ(h)等を対比すると、別表(一)記載のとおりの差異が存する。

しかしながら、本件登録意匠と引用意匠との対比における右差異は、そのうち、小突起の構成比率、ことに下辺の長さ(w2)対高さ(h2)、上辺の長さ(u2)対高さ(h2)及び意匠全体の高さ(h)と小突起の高さ(h2)との比率を除いては、いずれもわずかなものにすぎない。

また、両意匠における小突起の下辺(w2)対高さ(h2)は、本件登録意匠においては三対四であるのに対し、引用意匠にあつては二対一となつており、小突起の上辺(u2)対高さ(h2)は、本件登録意匠においては一対二であるのに対し、引用意匠にあつては三対二となつていて、本件登録意匠と引用意匠とでは、右の各対比においては逆の比率となつているけれども、両意匠における本体の形状の差異は、前記認定のとおり、ごくわずかなものであること、両意匠における小突起の本体に対する面積比は、別表(二)によれば、本件登録意匠においては約一対五・一、引用意匠においては約一対七・五となつていて、小突起が両意匠において占める面積は小さく、また小突起の本体に対する面積比は、両意匠間においてさしたる差異は存しないことからすると、本件登録意匠における小突起の右各比率は、引用意匠との対比において、本件登録意匠の特徴とすることはできない。

したがつて、本件登録意匠と引用意匠の前記差異はいずれも部分的なものにすぎず、前記のとおり、要部において共通している両意匠は全体として類似しているものというのを相当とする。

以上のとおりであつて、本件登録意匠は引用意匠に類似しているものとした審決の認定、判断に誤りはなく、原告の取消事由(二)の主張は理由がない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却する。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、意匠に係る物品を「目地形成用目地部材」とする、別紙目録に図示された構成の登録第四三四五二一号意匠(昭和四九年一月二五日登録出願、昭和五一年七月二四日設定登録。以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者であるが、被告らは、昭和五二年三月二五日、原告を被請求人として、本件登録意匠につき登録を無効にすることの審判を請求し、昭和五二年審判第三五四八号事件として審理された結果、昭和五八年一一月三〇日、本件登録意匠の登録を無効とする旨の審決があり、その謄本は昭和五九年一月一八日原告に送達された。

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